拝啓、関先生
2月、眠気を誘うもったりした空気の塾の事務室で先生は
「あなたもこちら側の人間だからシャカイで生きていくのがきっと大変だ」
といったようなことをおっしゃいました。
世の中と自身の間に線を引き、漢文を読み解くことに至上の喜びを見いだす、独特なファッションセンスの古文講師。
管理されるのが大嫌いな先生は新しく導入された勤怠管理システムのボタンを押す時いつも、嫌悪感をあらわにしていましたね。先生は今も元気にヒョウ柄のネクタイとクロコダイルのベルトを締めて、事務室に置いてあるお菓子を際限なく食べているのでしょうか。(たまにはご自身で補充もしてください!)
わたしは笑顔の鎧と「大丈夫です!頑張ります!」の盾を手に、シャカイで働いています。数字を追いかける、または数字に追いかけられることへの素質は先生が見抜いていらっしゃったように、あるとは言えません。
それでも怠け者のわたしは目標がないと愛しの寝床から抜け出すこともしないでしょうから、生きていくために胸の動悸を抑えながら身を起こします。
会社に行けば周りにはステキな大人がいて、何かと助けてもらい、甘やかされ、会いたい人も楽しいことも学びもあるのです。感謝しています。ここで良かったと思います。それでも家にいたいのですから、笑ってしまうほかありません。
耐えられなくなったらいつでも塾講師の口利きをして下さるという先生の言葉をぼんやりと頭に思い浮かべたりも致しますが、もう少し、資本主義の前線で足掻いてみようと思います。
先生も、お元気で。
敬具
日曜日の夜、やってくる朝をうとみながら
かにのにかより