かにのにかブログ

日々のモノローグ置き場。

かさぶた

電車から降りられなかった、たったそれだけのことなのに水の玉が頬を転がり落ちる。

マスカラしてない日で良かった。

 

浮腫んだ身体をひきずり帰り、テレビを見ながら何もしない弟たちを前に肉をこねなければならない。明日のプレゼンについて考えなければならない。

 

「ればならない」にくらくら、ぼーっとしていた。最寄駅で人が乗ってくる。「すみません降ります」を三回繰り返して出ようと試みたけれど、目の前のイヤホンの背中には届かなかった。

 

これは知恵熱のようなものだとわかっている。

研修で特別辛いことがあったわけでもないし、同期は良い人ばかりだ。みんなが違って当たり前、この会社では性別、国籍、年次などによって区別される事は無いと断言する社長もいる。そのための制度も社風もある。

 

でも同期の会話のテンポは速いし、初めての相手とお互い探り合いながらの作業。新学期のクラス替え後に付随する緊張感をまた味わっている。

小さなこぶかもしれないけれど、今は巨大な山脈なのだ。

 

気を取り直して選んだ入浴剤、弟が入れてくれたお風呂、美味しくできた夕飯、母のマッサージ、労いの言葉たちがぐしゅぐしゅに絆創膏ぺったんこ。

文字におこせばかさぶたになってくれる。

 

優しく撫でて、ストッキングに足を突っ込む。